ベトナムの実習生に続き、去年からはインドネシアの実習生を受入れている川村工業・モノリスコーポレーションでは、今年もインドネシアの実習生受入れのために、現地の送り出し教育機関を訪問。
川村工業から、今年は松本さんが採用面接に加わっていましたね。
中小の建設業では、大概は社長が採用面接に行くけれど、川村工業は若手社員に何でも挑戦させる試みで、今年は松本を連れていったよ。
松本さん、去年とは違って、自らの目で確かめた実習生を指導する立場になるんですね。
ジョグジャカルタにあるこの学校「いろは」では、基礎体力作りから語学力まで、「今の自分を突破する、諦めない心身を育てる」というかなり厳しい指導がなされている。ここで6ヶ月の基礎教育を終えて来日後、さらに日本の静岡にある訓練校で1ヶ月の研修を受けて企業に送り出される。その後は監理団体のサポートのもとに3年~5年の実習期間となる。
ベトナム実習生のときと違って、去年から川村・モノリスで採用している実習生は、インドネシアでの教育から日本の訓練校、その後の監理団体までが全て、グループ組織で管理されているんだ。
いわば中高一貫校のような感じで教育されている?
そんな感じだよ。でも最初に営業電話だかDMだかがあって、実際に話を聞くために事務所へ来てもらったときは、営業の話が下手でイラっ、管理費も高めだったし、追い払う寸前だったけどね笑
でも、なんか途中からその学校に興味がわいてきて、とりあえず静岡の訓練校を見てみようってね。その時のベトナム実習生の監理団体に限界を感じてたのもあったから。
去年はまだ新型コロナの影響で、インドネシアに飛ぶには面倒な条件がありましたし、静岡なら・・・
で、静岡で実際に先生たちに会って話したら、理事長や、女性で副理事の杉本先生とか、この人たちが運営している学校からくる実習生なら大丈夫だ!ってね。
こちらの姿を見たらどこからでも「おはようございます!」の元気な声が響き渡る。
「いろは」で最重要とされて訓練されるのは日本語教育だ。指導する側が、今の時代には技術力だけではなくコミュニケーション能力が重視されていることをよく理解している。それに加えての体力作り、校長の伊藤先生も生徒と一緒になって汗を流している。写真の後列中央の黒いTシャツを着ているのが伊藤先生だ。
この時期8月初旬に現地の学校で面談を終えて、採用が決まった実習生たちを日本に迎えいれるのは、順調に受け入れ準備が進んだとしても冬がくるころになる。
実習生制度の建前は技術を身に着け自国の発展に寄与することだが、彼らが習うより慣れろで仕事を覚え、日本語と自国語のバイリンガルになり、為替益を十分に享受して彼らが豊かになれるなら、受け入れる企業側にとってこれほど喜ばしいことはない。
決して裕福な家庭の子どもたちではない実習生たちが、日本でしっかり稼いで家族の元に仕送りし、家族のために家を建てる、家族の生活を豊かにする。今の日本では消滅しつつある意識かもしれない。
彼らの目的が明確であるから、学校の指導者も運営する立場の人間も、彼らをサポートする監理団体も、彼らの目的達成のために寄り添うことにブレがない。今の日本の教育が難しいのは、こういう原点の部分が揺らいでいるからか。
今回のインドネシアへは、静岡の訓練校の校長先生でもあり、現地の学校「いろは」から静岡の訓練校まで、それぞれのポジションにいる管理者たちに長く寄り添ってこられた杉本先生に、日本から同行して頂いた。待ち合わせの羽田ガルーダ航空カウンター前に、大きな荷物とゴルフバッグをカートに乗せて元気よく現れた先生は、70歳を少し過ぎた小柄な女性。最近になって健康のためにゴルフを始めたと話してくれた。
羽田を飛び立ち、ジャカルタから国内線に乗り換えジョグジャカルタに到着するまで、トランジットの待ち時間など含めてもおよそ11時間かかる。ジャカルタでのトランジットはかなりきつい、我々は乗り継ぎの時間が短かいうえに到着時間の遅れもあったので、わき目も降らずひたすら歩いた。
日本であらかじめ税関申告しておいたQRコードと、到着ビザ取得のための5000円札(おつりは出ない)とパスポートが必須。(到着ビザは事前にオンラインでも取得できるとあったが、システムがいまいち、空港で取るほうが早い)
ジョグジャカルタでの滞在先は日本の監理団体が手配してくれていた「ハイアットリージェンシー ジョグジャカルタ」、とても良いホテルだったので、バタバタと用事を済ませて帰国するのが残念だった。滞在客にも騒がしい人たちがいなくて、日本人もほとんど見なかったので、なお快適だった笑
このホテルの外観、あれ、そう、あのユネスコ世界遺産の・・・ボロブドゥール遺跡がイメージ!
世界最大級の仏教寺院「ボロブドゥール遺跡」から、ヒンズー教寺院のプランバナン寺院群へ。夕日が落ちていく束の間、幻想的な世界に感動!
実習生制度については、日本国内でも見直される状況にある。実習生の送り出し機関と、日本での監理団体がバラバラに機能し、俗に言われるアンダーマネーが横行している現状もあるようだ。制度の先行きがはっきり見えているわけではないけれど、実習生の人生の貴重な数年間を、受入企業側としても育て見守っていきたいと思う。