外国人技能実習生採用という本来の使命の合間を縫い、再びバワ建築を巡る旅へ—2度目のスリランカ【前編】№11、ルヌガンガ

左官・土間職人増員・育成に向け、外国人技能実習生採用のため、去年の10月初めてスリランカへ。成田—コロンボ間の飛行時間はおよそ9時間、現地夕刻、バンダラナイケ国際空港に降り立った。宿泊先はコロンボのゴールフェイスホテル(Galle Face Hotel)

1.ゴールフェイスホテル(Galle Face Hotel)

建築に関わる者にとって、コロニアル様式のこのホテルも非常に興味深い。「南アジアの貴婦人」と称され、元々はオランダ人の別荘だったものが、4人のイギリス人起業家によって、1864年開業のホテルへと変貌。その後、増築、土地の買収を続け現在の姿になり、創業から160年の時を”古びた”にせず、強力な味方にしているヘリテージホテルだ。

SHIBAZAKI

このホテルはバワの設計ではありませんが、このチェッカーボードのバースペースはバワを彷彿させます

KAWAMURA

モノトーンのチェッカー柄が、草や木、空や海を背景にモダンな空間を創りだしてる

SHIBAZAKI

そうですよね

SHIBAZAKI

昭和天皇もこちらに滞在されたようで

KAWAMURA

チェ・ゲバラと同じ棚….

SHIBAZAKI

上段から、昭和天皇→ジャズピアニスト→革命家….順不同ですね

KAWAMURA

シンガポールのラッフルズや香港のペニンシュラ、コロンボのゴールフェイスホテルは、アジアの代表的なホテルだから、有名人が多く滞在している

2.ヘリタンス・カンダラマ(Heritance Kandalama)

ゴールフェイスホテルをあとに、途中キャンディに寄りダンブッラまで、長い道のりをワンボックスカーに揺られて向かった。途中の悪路に大きく身体が飛び跳ねたり、日が暮れる頃、ようやく目的地に辿り着いた。

夕暮れの山あい、静けさの中に突然姿を現すホテル—ヘリタンス・カンダラマ(Heritance Kandalama)

SHIBAZAKI

ヘリタンス・カンダラマは、バワ建築の最高傑作と言われていますが、唯一内陸部に建つホテルなんです

ライトアップされたインフィニティプール、向こうに広がるカンダラマ湖(人造湖)と一体化

朝焼けのヘリタンス・カンダラマ、鳥の鳴き声で目を覚まし、ベランダには猿がやってくる

SHIBAZAKI

去年のFacebookを参考までにお読みいただければ

初めてのスリランカ訪問で、ヘリタンス・カンダラマに魅せられ、建築家ジェフリー・バワに惹かれ、そして2度目の今回、駆け足で訪ねた6つのバワ建築。

ジェットウィング・ラグーン(Jetwing Lagoon )/ナンバーイレブン(No.11 )/ ヘリタンス・アフンガッラ(Heritance Ahungalla) / ジェットウィング・ライトハウス(Jetwing Lighthouse)/ ルヌガンガ(Lunuganga) / ザ・ブルー・ウォーター(The Blue Water

KAWAMURA

「建築は語るものではない、体験するものである」とバワが言ってる

SHIBAZAKI

それで、体験した感想はいかがですか?

KAWAMURA

語るものではない

SHIBAZAKI

笑 「汝、体験すべし」ですか

KAWAMURA

そう笑

3.自然と一体になる

バワの建築は、自然をねじ伏せてその上に君臨していく都会の建築群とは違う。どの場所も、植物や鳥、小動物、風や光を遮ることなく、草木が絡み、鳥が棲みつき、動物たちが姿を見せる。「完成」する建築ではなく、自然と対話しながら時とともに「成熟」していく建築だ。

“I want to blur the boundaries between inside and outside.”  —— ジェフリー・バワ(Geoffrey Bawa)

意味は、「室内(inside)と屋外(outside)の境界(boundaries)をあいまいにしたい」

KAWAMURA

壁や窓で仕切られていなかったり、室内に天井さえも無い場所があったり

SHIBAZAKI

たしかに、風が吹き抜け、光が差し込む心地よさがありましたね

SHIBAZAKI

でも、雨や嵐の日はどうなるのでしょうか

KAWAMURA

今回はラッキーなことに晴天続きだったから、未体験

SHIBAZAKI

いつか体験しに行ってください笑

4.ナンバーイレブン(No.11 )

SHIBAZAKI

№11はバワの仕事場だった場所です

イイ感じに時を刻んでいる外観

SHIBAZAKI

こちらでも宿泊できますが、1日1組限定とのこと….室内ツアーは事前予約制、所要時間は約1時間で、1グループ10名前後。管理しているのはジェフリーバワ財団

KAWAMURA

週末は、ここから車で30分ほどの別荘ルヌガンガで過ごしていた。ちょっと羨ましいかな

SHIBAZAKI

ルヌガンガも同じくジェフリーバワ財団の管理です

SHIBAZAKI

バワの仕事場だったこの家は、10年掛けて隣家を買い増し、買い増しで、4棟をくっつけた建物に改築を繰り返して、かなり複雑な内部構造になっています

KAWAMURA

入口を入るとすぐ車庫、ビンテージの1934年ロールスロイスと、1953年メルセデスベンツが置かれている

SHIBAZAKI

詳しいですね!

KAWAMURA

うん、リーフレットに書いてあった

SHIBAZAKI

あらそ

SHIBAZAKI

まず、この場所で全体説明があります

SHIBAZAKI

室内を案内して下さったのは、財団スタッフの男性です

正面玄関ドアの図柄は、バワ建築に多く登場する芸術家「ラナ・セナナヤケ」作

廊下沿い、オープンエアーの中庭に光が差し込み、風が流れる。

KAWAMURA

バワは大男だったと聞くけれど、廊下や階段は意外に狭く、天井もあまり高くなかったり

SHIBAZAKI

確かに

あのヘリタンス・カンダラマの大フクロウも、この金のフクロウも「ラナ・セナナヤケ」作、石の上には、愛犬のためのクッションが。

SHIBAZAKI

この先の廊下の壁の上部空間には、有刺鉄線が張ってありましたね、自然とは対極というか….

KAWAMURA

うん、聞くと「猿の入室お断り」のためと

SHIBAZAKI

それは仕方ありませんね、仕事場ですから笑

SHIBAZAKI

バワが世界中から集めたアンティークコレクションが、不思議な世界観のあるインテリアになっていて

SHIBAZAKI

プライベートルームは入室禁止だったり、撮影禁止だったりで残念でした

SHIBAZAKI

これはゲストルーム、この部屋以外はエアコンありませんから、汗だくになりますが、№11は必見の価値ありです!

屋上へ上がる白い階段、手摺りもオブジェ

KAWAMURA

屋上に上がると、棟をくっつけているのがよく見えて、参考になったよ

SHIBAZAKI

壁や床、天井も、白がたくさん使われていて、それがとても綺麗で清潔に保たれていました

SHIBAZAKI

スタッフの方たちが、バワをこよなく愛していることがよく分かります

5.ルヌガンガ(Lunuganga

スリランカ南西部、ベントータ近郊に位置する広大な敷地(約6ヘクタール)は自然のままに良く手入れされ、小径を下りて行くと蓮池のある「ウォーターガーデン」、カエルが泳ぎ、アンティークの日時計がオブジェに….ウィークデーは№11で仕事をし、週末はここルヌガンガで過ごしていたバワ。

下に見える蓮池は、蝶が羽を広げた形になっている。

事務所棟「ガーデンルーム」

事務所棟「ガーデンルーム」には大きな一枚板のテーブルがあり、この上で図案を書いたりしていた。

ヘリタンス・アフンガッラのインフィニティプールに置かれている「ラブチェアー」と同じ、二人で座ると向き合うようになる。階段はデザインのためだけに設置。窓や枠組みは、そこから見える風景画の額縁の役目をしている。

窓ガラスの絵が描かれた開き戸が楽しい。

目の前に広がるデッドゥワ湖、汽水湖のため満潮時は海水が増えるので、ルヌ(塩)ガンガ(川)と名付けられた。

湖畔のウォーターゲートには、毎朝ワニが姿を見せるとスタッフが言っていた。

SHIBAZAKI

湖畔の芝生もチェッカー柄ですね

バワ建築の聖地、バワの理想郷とも言われるルヌガンガ、シナモンヒル(オランダ統治時代シナモン農園だった)の斜面の途中にひっそりとバワがここに埋葬(風葬)された印を残している。

同じ場所の写真、建物の前に大きく枝を広げているのはプルメリア。建物、庭、樹々、景色、家具や調度品まで、外からの景色、建物内部から外を見た景色(ツアーでは見られなかった)、光が創り出す影さえも、空間を構成する全てを計算している。盆栽には詳しくないので詳細は割愛するが、盆栽に見るようにプルメリアの枝の広がりも自然のままではなくデザイン・加工され、ジャングルの中によく手入れされた芝生が広がる。熱帯雨林と、ヨーロッパ風の庭園が違和感なく存在している。バワ自身がアジアとヨーロッパのハーフだったから、この発想が生まれたのかもしれない。

バワにおける設計とは、建物の設計を意味するのではなく、建物、庭、自然、景色、インテリアといった空間を構成する全ての要素全体を設計すること。—Jetwing Japan より

KAWAMURA

ここは、バワの実験場みたいな場所だったから、ここでの試作がバワ建築に生かされていったんだ

SHIBAZAKI

バワ建築の多くは海に面したリゾートホテル、その中で唯一内陸部にあるヘリタンス・カンダラマには、ここでの実験がすごく必要だったと思います

KAWAMURA

自然との融合って簡単じゃない、ほったらかしにしていたら、あっという間に樹木に制圧されてしまうからね

SHIBAZAKI

自然は自然のままにしていると好き勝手暴れます、うちの庭もちょっと放置するとジャングルです

KAWAMURA

SHIBAZAKI

植物や動物、生き物の維持管理は大変なことです。だからヘリタンス・カンダラマのように内陸部に建つホテルは、たった一つだけになったのかも….ルヌガンガでの集大成として

KAWAMURA

建築家というよりは、空間デザイナーと呼ぶべきかも

自然と融合する建物、白と黒を基調としたモノトーンのインテリア、コラボレーションした芸術家たちの作品、バワが集めた世界中のアンティーク….バワの理想郷であり、バワ建築の脳の部分がここルヌガンガと№11にある。

ルヌガンガの客室は、グラスハウス、シナモンヒル(2)、メインハウススタジオ、ギャラリースタジオスイート、ルヌガンガマスタースイートの6室のみ。

SHIBAZAKI

ツアー開始まで待ち時間があると、敷地入り口のところにカフェカウンターがあって、飲み物をオーダーできます

SHIBAZAKI

ヤシの実ジュースを頼んだら、可愛いミッキーマウス風になって出てきました。ついボールペンで目を入れたくなって笑

KAWAMURA

頭にストローがぶっ刺さってる

SHIBAZAKI

….

SHIBAZAKI

時間に余裕がある方は、連泊がおすすめです。マスタースイートは時期によっては1泊25万円ぐらいするそうですが

ルヌガンガも見学には事前予約が必要、見学ツアーは1日に3回、所要時間は1時間~1時間30分。

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