それは1通のメールから
左官の窓口に届いた1通のメール
マンションの約5畳の部屋(3方が窓とふすまと4枚戸)の壁にしみが入り、ネットで検索して「一人で塗れるもん」というプログを見つけ、材料とこてを買って、1/3ほど塗りました。なるほど素人でも塗れましたが、出来上がりは凸凹で全く見栄えが悪い。材料はまだ残っていますので、左官屋さんを派遣願い、既に塗ったところの上塗りと、まだの所を塗って頂きたいのですが、可能でしょうか? 全体で約12㎡ぐらいです。
もし可能なら、一人、一日どのくらいの費用がかかるものでしょうか。2日はかからないと思いますが‥。

ホームページのお問合せに届いたメールです。



個人宅の仕事はあまり扱ってないんだけど、状況説明が簡潔に書かれていて、これは何か手助けできるならばと思えたんだ。



心動かされたんですね



そんな感じかな、で直接電話を掛けて詳細な状況を聞かせてもらったら



むしろ、逆に興味が湧いてきて笑



なるほど



こちらのメールを読ませていただくと、最近の若い方にありがちな文章と違って、きちんとした日本語でとても心地よく、多分ご年配の方かなと



そうだね、電話も丁寧でとても感じの良い人だった



さらに、状況が分かるような写真も送ってもらった。



我々が普段やっている新築マンションの左官工事現場とは違って、人が住んでいる状態での手直し・補修だし、状態がどの程度か、作業する周りの様子とかね



なるほど!
事前準備



それで、とくに気遣った準備というのは?



まずは、マンションの個人宅で洗面所に汚れた水をじゃーじゃー流せないこと、大きなバケツを持ち込むこともNGだしね



そうですよね



部屋の状況をイメージしながら、あとはコテなど道具類とブルーシート、脚立かな



マスキングテープは?



あ、それ要らない



あら、そうなんですか



当日行けば分かるよ



それから、上履きをちょっと暖かいの買ってきた。暖房してない部屋だったら足が冷えるし



笑、その他には何か準備を?



ふふ
YouTubeで学習した笑



えーーーーーーーー笑



いや、残っている材料を使うわけでしょ



「オンザウォールひとりで塗れるもん」っていう塗り壁材を、YouTubeで事前の情報収集ね



なるほど



最近は何でもYouTubeで学習できてすごいよ



はぁ
「ひとりで塗れるもん」事故現場



現場検証ですね



現場検証って….
事故現場じゃないんだから



いいえ、凸凹になるという事故が起きていますから笑



・・・・・
■現場の状況を目視で確認





けれども、見ようによっては味のある壁と言えますね



そうなんだよね



だから、ご主人の塗ったところを作品として残してあげて、まだ塗っていない箇所を上手く繋げていく感じに仕上げようと



いい案ですね!



奥さんも、それがいいねって
■証拠となるものを触って確認





バケツ缶のシールが可愛い、色ごとにキャラクターが違うんですね。これは「こて爺」カ―ミーブラウンです。



塗り壁材がペースト状に練りこまれた状態でペール缶に入っているから、水で練る手間いらず



この商品のことは知っていたけど、我々が材料として扱うことは無かったから
■事故当事者から話を聞く



しかし、全くの素人の方が….ご自分で壁を塗ろうと?



ブログなどを読んで学習したそうだ



へーーーー
DIYブームですが、左官の壁塗りはハードルが高そうな



そのハードルを越えようというモチベーションアップを手伝ってくれたのが、「オンザウォールひとりで塗れるもん」という塗り壁材



ご主人は、ただ平たく塗るのではなく、ガサガサした感じに仕上げたかったらしい
■事故の状況や現場の様子を記録



そうすると、出隅や入隅、チリ回りがピシッと仕上がっていないと



確かに、そこはプロと素人の違いが出るところでしょうね
出隅(ですみ)とは壁や板が外向きに出会う角(凸角)、入隅(いりずみ)とは壁や板が内向きに入り合う角(凹角)、チリ回りとは土壁や壁材と柱などの取り合いの部分。こういう部分をキメておくと作品(仕上げた壁)が良く見える!



それと、マスキングテープを貼ったままにしておくと剥がれにくくなる。そうすると、剥がすときに塗った壁材や柱に被害が及ぶんだ。



えーーーーー
マスキングテープって、そうなんですか!



今回の現場ぐらいならマスキングテープは不要



プロはマスキングテープを使わなくても塗れるんですね。



プロだってマスキングテープを使う場合があるけれど、塗り終わったら剥がす。



長時間貼りっぱなしはダメなんですね。





そそ、時間が経ってから剥がすと、クソまみれになる



クソ…..って



笑
業界用語というか職人さん用語の「クソ」を残さないようにするため、マスキングテープは塗り終わったら剥がす。
プロの極意



さて、修復された事故現場はどのように



残すところは残して、修正が必要なところは修正して、手付かずのところを仕上げる!







半日仕事だったから、壁材が乾く前に写真撮っているので色ムラがあるけれど



半日ですか….



作業は半日だけど、大事なのは前準備、あとは見栄えを作るコツかな必要なのは笑





コテ板に養生テープ?



マンションの個人宅では、最後に道具洗ったりできないからね



なるほど、養生テープ剥がしてポイすれば、コテ板洗わなくていい



そういうこと



あ~それから、私見ちゃいました



何を?



塗り壁材の缶開けて、上にかぶさっているビニールについている材料もちゃんとすくって、缶の中の材料と混ぜてましたよね。



プロには当然のこと、材料を捨てるなんてもったいないし、捨てればゴミを増やすことになるし



ひとりで塗るもんのサイトの施工手順プロモーション動画では、ビニールについた材料は使っていませんでしたけど笑



あっそう笑



では最後にプロの極意を教えて下さい!



どんな材料でも、温度や湿度の違いがあっても、その場で使いこなす極意は?



ふふ



ふふ、じゃなくて



プロの極意は「水」



水ですか



水商売だよこの仕事は



……



笑



水湿し(みずしめし)という建築技法があるけど、



ほ~~~~
塗り材料の凝結効果に必要な混練水が給水されないように下地面にあらかじめ散水することを水湿しという。





マスキングテープを使わずに、水を含ませた刷毛でチリ回りを整えたり、これも水の応用。



なるほど、プロの極意は「水」ですね!



