国税の査察調査というのは、ほぼ黒と目星をつけて、証拠隠滅などされないよう事前通告なく、関係各所に一斉に令状を持った国税調査官が乗り込んでくる、そう映画やドラマにあるあのシーンだ。
査察調査の流れ
マルサに入られてこの後どうなるのだろうかと、先が見えなくて不安な人は、国税庁のサイトにあるパンフレットを見るといい、すごく分かりやすいから。
国税庁のサイトから
これを読むと分かると思うけれど、マルサが入った時点がスタートじゃない。先にいろいろな情報を収集して、調査を重ねて、ほぼ黒と目星をつけた上で裁判所に許可状を請求し、令状をとって国税調査部通称マルサが乗り込んでくるわけだ。
このパンフレットにある「査察調査の流れ」は建設業でいうなら工程表みたいなもので、今やっている工事、次にやる工事が一目瞭然。着工がタレコミで、竣工は「有罪判決」みたいなイメージだろうか?
「査察調査の流れ」の今どこに自分がいて、この先何があるのか分かれば対策を打つことができる。何度も言うけれど、マルサが入るのはほぼ黒と目星をつけているわけで、身に覚えがあってもなくても起訴されるのがオチと考えて最初から弁護士に相談した方がいいと思う。脱税は犯罪だから。しかし、他の犯罪と違って、脱税をするにはまず稼がないといけない。しかもマルサに入られ告発されるほどの規模になるには稼ぐ金の桁もそこそこな・・・
マルサの目的は「告発」
元国税調査官だったというヤメ・・・によると、査察官にとって手柄は一に告発、二に脱税額らしい。告発より税額かと思ったが違った。民間の会社とは感覚がズレる。
マルサの目的は一に「告発」で、査察官が検察へ告発すればその先は検察の領域だ。
国税局査察部による強制調査となった脱税案件のうち、検察へ告発となるのは約70~80%、何度も言うけれど、マルサが入るってことは「ほぼ黒」なわけだ。
この告発率70%の捉え方だけど、じゃあ30%は告発されないのね、と考える人もいるだろう。けれども、たとえ告発されなくても#001で書いたように、マルサに入られると根こそぎ持っていかれるから後がすごく大変なことになる。それに当日の関係各所だけでなく、査察は後日の取り調べでお得意先の会社にも行って、聞き取りだけじゃなく関連の書類を要求したりもするから、迷惑の輪がかなりの範囲に広がる。得意先によってはコンプライアンスの遵守だとかで、取引停止されることにもなる。
川村のときは、ゼネコンが関与しているんじゃないかと疑われて、当時川村の会社が請負っていた現場を管轄していた支店や、現場の所長にまで査察が調べに行き、あれ出せこれ出せで顧客の事務所が大混乱、もの凄くお客様に迷惑をかけてしまった。取引の長いお客様は理解してくれたけど、新規のお客様ではコンプライアンス云々で取れた仕事がフイになったものもある。
さて、では告発されるとどうなるか、告発されたらほぼ100%起訴されて、ほぼ100%有罪になると国税庁の脱税白書に書いてある。よくある脱税弁護のご相談サイトなどに、脱税事件で無罪を勝ち取りたいとかご相談にのりますってあるけど、有罪率ほぼ100%なのに無理でしょ。(国税庁のサイトを見ると、直近3年間で起訴328件、有罪327件だ)
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2022/sasatsu/r03_sasatsu.pdf
国税庁のサイトから
とにかく身に覚えがあってもなくても?専門の弁護士や税理士に早く相談した方がいいと思う。早ければ早いほど対処できることも多いし、査察のメンツを掛けてほじくり返しにくるから、思わぬところに影響が出たりもするので。
川村が依頼したのは脱税案件を専門に扱っている弁護士で、査察に精通した税理士とタッグを組んでいて、「逮捕されて拘留されたらつまんねぇだろ」と、とにかく逮捕・拘留されないようにアドバイスしてくれた。腑に落ちないからと抵抗していると、本当に逮捕されるかもしれない領域にいるってことを川村も実感した。
川村の場合「ブツ」が出なかったから、弁護士さんがボソッと「これ長くなるなぁ」って呟いたけど、その通りになった。

